「銅合金は熱伝導率には優れるが、摩耗には弱い。」

これはプラスチック金型業界では長年の常識でした。

そのため、冷却性能を優先して銅合金を採用したものの、想定よりも摩耗が早く、短期間でメンテナンスや部品交換が必要になったという経験をお持ちの金型メーカー様や成形メーカー様も少なくないのではないでしょうか。

一方、耐摩耗性を重視して鋼材を選択すると、今度は熱伝導率が低下し、冷却時間が長くなることで成形サイクルに影響が出ることがあります。

つまり、「熱伝導性」と「耐摩耗性」は、これまで相反する性能として考えられてきました。

しかし、この常識を覆す可能性を秘めた技術があります。

それが、エジソンハード処理です。


エジソンハード処理とは

エジソンハード処理は、低温域で行う特殊な窒化処理です。

一般的な熱処理や高温窒化処理とは異なり、母材への熱影響を最小限に抑えながら、表面だけを高硬度化できることが最大の特長です。

そのため、

  • 寸法変化が極めて少ない
  • 精密加工後にも適用しやすい
  • 変形を抑制できる
  • 母材の靭性を維持しやすい
  • 高精度な金型部品にも適用できる

といったメリットがあります。

当社では、プラスチック金型をはじめ、ダイカスト金型、プレス金型、治工具、機械部品など、多くの製品にエジソンハード処理を適用してきました。


プラスチック金型で求められる性能は年々変化している

近年のプラスチック金型では、生産性向上がこれまで以上に重要視されています。

特に、

  • 成形サイクル短縮
  • 冷却効率向上
  • 歩留まり改善
  • メンテナンス時間短縮
  • 金型寿命延長

は、多くの現場で共通するテーマです。

さらに、ガラス繊維(GF)や炭素繊維(CF)を配合した高機能樹脂の普及により、金型への負荷は年々増加しています。

樹脂自体が高硬度化しているため、

  • キャビティ
  • コア
  • コアピン
  • 入れ子
  • スライドコア

などでは摩耗が進みやすくなっています。

そのため、「冷却性能を高めたいが、耐摩耗性も欲しい」という要求が非常に増えています。


銅合金には長所もあれば弱点もある

銅合金は非常に高い熱伝導率を持っています。

そのため、

  • 厚肉製品
  • ヒケ対策
  • サイクル短縮
  • 局部冷却

などでは非常に有効です。

しかし、その反面、

  • 摩耗しやすい
  • 傷が付きやすい
  • ガラス繊維入り樹脂で寿命が短くなる
  • エッジ部が丸くなりやすい
  • カジリが発生しやすい

という課題があります。

そのため、

「熱伝導率は維持したい。」

「でも摩耗だけ改善したい。」

という相談が以前から数多く寄せられていました。


従来は諦めるしかなかった耐摩耗性

これまで銅合金では、

  • コーティング
  • メッキ
  • 部品交換

などで対応するケースが一般的でした。

しかし、コーティングは密着性や膜厚の問題があり、メッキでは耐摩耗性が十分とは言えず、

結局は部品交換を繰り返すというケースも少なくありませんでした。

そこで期待されるのが、母材表面そのものを硬化させる技術です。


表面だけを硬化させるという考え方

エジソンハード処理では、表面に硬化層を形成することで、

  • 摩耗を抑える
  • カジリを防止する
  • 焼付きを抑える
  • 金型寿命を延ばす

ことが期待できます。

しかも、母材全体を硬化させるわけではないため、

内部の熱伝導性能や靭性を活かしながら、必要な部分だけを強くするという設計思想が可能になります。

この「必要な部分だけを強くする」という考え方は、近年の高性能金型において非常に重要になっています。


関東・埼玉県でも相談が急増

当社グループでは、関東エリア・埼玉県を中心に、プラスチック金型向けの熱処理窒化処理エジソンハード処理について、多くのご相談をいただいております。

最近では、

  • 「ガラス繊維で摩耗する。」
  • 「冷却性能は落としたくない。」
  • 「寸法変化は困る。」
  • 「PVDだけでは寿命が足りない。」

といったご相談が増えています。

当社では、お客様の用途や樹脂種類、使用環境に応じて、最適な処理方法をご提案しています。


鉄鋼だけではない。新しい可能性へ

エジソンハード処理は、これまで鉄鋼材料への適用を中心に発展してきました。

しかし現在では、「熱伝導材料にも応用できないか。」という新たな挑戦を進めています。

実際に評価を重ねた結果、従来では難しいと考えられていた材料でも、表面硬化の可能性が見えてきました。

これは単に材料を硬くするという話ではありません。

熱伝導率という大きなメリットを維持しながら、耐摩耗性という弱点を補う、新しい材料設計の考え方です。

もしこの技術が普及すれば、

  • 冷却効率
  • 金型寿命
  • メンテナンス頻度
  • 生産性

これらすべての改善につながる可能性があります。


そして、その材料とは…

ここまで「銅合金」と表現してきましたが、今回のテーマとなる材料は、一般的な銅合金ではありません。

今回、エジソンハード処理による窒化硬化を確認した材料は、MTA-Fex2です。

MTA-Fex2は、高い熱伝導率と優れた機械的特性を兼ね備えた高機能銅合金として、プラスチック金型の入れ子やコア、冷却部品などで採用が進んでいます。

このMTA-Fex2に対してエジソンハード処理を適用した結果、Hv780(換算値63.4HRC)の表面硬化が確認され、耐摩耗性向上への新たな可能性が見えてきました。

これにより、「熱伝導率が高い材料は摩耗に弱い」という従来の課題に対し、新しいアプローチを提案できるようになりました。


山崎化学エイチ・テイは、新しい熱処理技術に挑戦し続けます

山崎化学エイチ・テイ株式会社では、埼玉県を拠点に、関東エリアのお客様へ窒化処理・エジソンハード処理・熱処理サービスをご提供しています。

従来の鉄鋼材料だけでなく、新素材や特殊材料への適用についても積極的に評価を進め、お客様の課題解決につながる技術開発を続けています。

これまで培ってきた窒化処理技術とエジソンハード処理のノウハウを活かし、お客様の用途に最適な表面改質をご提案いたします。

銅合金への窒化硬化という新たな一歩が、次世代のモノ作りの可能性を広げていきます。

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