射出成形用ノズルにおける耐久性の課題は、「摩耗」や「剥離」だけでなく、「腐食環境への適応性」によって最終的な寿命が大きく左右されることが、これまでの調査および実機試験から明確になっています。本稿では、前回、戦前回で解説した窒化処理の課題に加え、実際の腐食試験データをもとに、エジソンハード処理の優位性についてさらに踏み込んで解説します。

今回実施された試験では、射出成形機用ノズル材として広く使用されているSUS420J2改良鋼種のプリハードン材を対象に、「無処理材」と「エジソンハード処理(EH処理)材」の比較評価が行われました。特筆すべきは、この試験が実際の樹脂流動を伴わない状態で、あえて腐食ガス環境のみを再現している点です。すなわち、純粋に材料と表面処理の耐腐食性能を評価するための条件が設定されています。

試験条件としては、ポリスチレン系樹脂を加熱し、210℃から最大260℃まで昇温した状態で腐食性ガスを発生させ、その環境下に試験片を曝露しています。期間は約17日間に及び、実際の成形現場に近い厳しい条件下で評価が行われました。

その結果は非常に明確です。無処理のSUS420J2改良鋼種のプリハードン材では、表面に顕著な腐食が発生し、酸化の進行が確認されました。一方で、エジソンハード処理を施した試験片では、腐食の進行が大幅に抑制され、外観上も明らかに良好な状態が維持されていました。つまり、同一材質であっても、表面処理の違いによって耐腐食性能に大きな差が生じることが実証されたのです。

一般的に、ステンレス鋼のような耐食性材料に対して窒化処理を施すと、耐食性が低下するという認識が広く知られています。これは、窒化によって表面の不動態皮膜が破壊される、あるいはクロムの固定化により耐食性が損なわれるためです。そのため、従来の窒化処理では「耐摩耗性は向上するが耐食性は犠牲になる」というトレードオフが避けられませんでした。

しかし、エジソンハード処理はこの常識を覆します。不要な化合物層を生成せず、母材組織への影響を最小限に抑えながら拡散層のみを形成することで、耐摩耗性と耐食性を高次元で両立しています。今回の腐食試験結果は、その理論が実際の環境下でも成立していることを裏付けるものです。

さらに注目すべきは、「腐食と剥離の複合トラブル」に対する抑制効果です。その2で述べた通り、従来の窒化処理では酸化膜の剥離と同時に窒化層が巻き込まれて剥離し、異物混入や寿命低下の原因となっていました。しかし、エジソンハード処理では、そもそも脆性の高い白層や不安定な化合物層を形成しないため、このような連鎖的な劣化が発生しにくい構造となっています。

結果として、内径部においても長期間にわたり安定した状態を維持でき、成形品への異物混入リスクを低減しつつ、ノズルの交換サイクル延長にも貢献します。これは単なる性能向上ではなく、「品質安定」と「コスト削減」を同時に実現する重要な要素です。

射出成形においては、ガス腐食・高温環境・繰り返し熱応力といった複合的なダメージが常に発生しています。その中で、表面処理に求められる役割は年々高度化しており、従来の窒化処理だけでは対応しきれないケースが増えているのが現状です。

エジソンハード処理は、こうした現場の課題に対して「過剰な処理をしない」という設計思想に基づき、必要な性能だけを最適に付与する技術です。深すぎる窒化層による脆化、白層剥離、耐食性低下といった従来の問題を回避しながら、実使用環境での信頼性を確保します。

リヒト精光グループでは全国対応、山崎化学エイチ・テイ株式会社では埼玉・北関東エリアを中心に、射出成形部品の高品質化が求められる中で、ノズルの寿命やトラブル対策にお悩みの企業様にとって、エジソンハード処理は有効な選択肢となります。実証データに基づいた確かな性能で、現場の課題解決に貢献いたします。

プラスチック成形金型やノズルの腐食・摩耗・剥離といった複合トラブルに対し、「なぜ起きるのか」だけでなく「どう防ぐか」まで踏み込んだ対策をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。

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