樹脂金型の熱処理で、最も気にされるのが「変形」と「変寸」です。
特に仕上げ加工後の入子やプレートでは、わずかな寸法変化でも再加工が必要になり、納期やコストに直結します。

こうした背景から、近年では樹脂金型の熱処理に非ステンレス系材料への窒化処理を採用するケースが増えています。しかし、実際には金型用途、エンドユーザー指定、図面指定などによりステンレス系材料への真空熱処理が採用されているケースが多く、熱処理後の変形、熱処理変寸は加工メーカー様と熱処理業者間での大きな課題とされてきました。

当社では、長年の真空熱処理技術とノウハウにより酸化を抑えながら均一に加熱・冷却できるため、金型の精度維持という点で大きなメリットを提案しております。


樹脂金型で変形・変寸が発生する主な要因

熱処理による変形・変寸は、単純に「焼入れをしたから起きる」というものではありません。
実際には、いくつかの要因が重なって発生します。

『材料内部に残った加工応力』『不均一な加熱・冷却』『焼入れ時の温度ムラ』『冷却速度と形状のアンバランス』等々・・特に樹脂金型は、『深掘り形状』『肉厚差の大きい構造』『冷却穴やポケット加工』といった要素を持つことが多く、応力の偏りがそのまま変形として表れやすいのが特徴です。


真空熱処理が樹脂金型に向いている理由

真空熱処理は、真空炉内で処理を行うため、表面の酸化が発生しにくいためスケール除去や再仕上げが不要となります。また鏡面部品においては、ミガキ工数が最小限で済むという利点があります。

また、プログラム制御により加熱・保持・冷却を穏やかにコントロールすることができるため、全体が均一な熱処理が可能で、製品全体を見たときの応力バランスを保ちやすくなります。

結果として『焼入れ後の反り』『平面度の崩れ』『穴位置・ピッチのズレ』といったトラブルを抑えやすくなります。


樹脂金型で使用される主なステンレス鋼材

樹脂金型では、耐食性や磨き性を考慮してステンレス鋼が多く使用されます。
代表的な鋼材には以下のようなものがあります。

  • SUS420J2
    焼入れによって高い硬度が得られ、汎用的に使用される樹脂金型材。
    ただし、熱処理条件によっては変形が出やすいため、管理が重要。
  • SUS440C
    高硬度・高耐摩耗が求められる用途向け。
    その分、焼入れ応力も大きく、冷却条件の最適化が欠かせません。
  • 析出硬化系ステンレス鋼(例:SUS630/17-4PH)
    焼入れ変形が比較的少なく、寸法安定性を重視する樹脂金型に適しています。
    時効処理条件の設定が品質を左右します。
  • プラスチック金型用ステンレス鋼(STAVAX S-STAR HPM38 EXMAX 等)
    被削性・磨き性・耐食性を考慮した専用鋼。
    真空熱処理との相性が良い材質も多く、用途に応じた条件設定が重要です。

これらの鋼材は、同じステンレス鋼でも熱処理の考え方が異なるため、材質ごとの特性を理解した処理が必要です。


変形・変寸を抑えるための熱処理上の工夫

樹脂金型の真空熱処理では、以下の点が重要になります。

  • 焼入れ前の加工状態に合わせた前処理
  • 熱処理時のセット方法と治具の最適化
  • 昇温速度・予熱温度の設定
  • 保持温度・保持時間の最適化
  • 冷却方法の選定(ガス圧・冷却バランス)

特に「できるだけ硬くしたい」という要望だけを優先すると、結果的に変形が大きくなり、金型として使いにくくなるケースもあります。指定された硬度・耐摩耗性・寸法安定性のバランスをどう取るかが、樹脂金型熱処理では最も重要なポイントです。


樹脂金型の熱処理は「工程全体」で考える必要があります

真空熱処理は、変形・変寸を抑える有効な手段ですが、万能ではありません。
前加工の状態、加工順、仕上げ代の取り方まで含めて考えることで、初めて効果を発揮します。

「焼入れ後にどれくらい動くか」「どの部分が動きやすいか」こうした点を想定した上で処理条件を組むことが、樹脂金型では特に重要です。

当社では、加工開始前の材料準備段階からお客様と関わらせていただき、鋼材特性や加工内容を踏まえた熱処理屋の視点での情報提供を行っております。そのうえで、変形・変寸リスクや使用条件を共有しながら、担当者様と一緒に最適な真空熱処理条件を検討・ご提案いたします。

樹脂金型の精度や安定性でお悩みの際は、加工後ではなく「加工前」からのご相談が、結果を大きく左右します。

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