「ハイスの熱処理を依頼したい」「SKH51を焼入れ・焼戻ししたい」「ハイス鋼の硬度が安定しない」「粉末ハイスの熱処理に毎日対応できる会社を探している」。

金型や工具に使用されるハイス(高速度工具鋼)では、このようなご相談が少なくありません。

ハイスは、正式には高速度工具鋼(High Speed Tool Steel)と呼ばれ、JISでは「SKH」で表される工具鋼です。SKH51をはじめ、SKH52、SKH55、SKH57、SKH59など、用途や要求性能に応じてさまざまな鋼種があります。

さらに近年では、従来の溶製ハイスよりも耐摩耗性や靭性、寸法安定性などを重視した粉末ハイス(粉末高速度工具鋼)も、精密金型やパンチ・ダイなどで使用されています。

しかし、ハイスは「材料を選べば終わり」という鋼材ではありません。

ハイス本来の性能を引き出すためには、焼入れ・冷却・焼戻しまでを含めた熱処理技術が非常に重要です。

ハイスとは?高速度工具鋼の特徴

ハイスは、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)などの合金元素を多く含む工具鋼です。

一般的な工具鋼と比較して、高い硬度と耐摩耗性を得やすく、高温環境でも硬さを維持しやすいことから、切削工具や金型など幅広い用途で使用されています。

代表的なハイス鋼として知られているのがSKH51です。

SKH51は、ドリル、エンドミル、タップ、リーマなどの切削工具だけでなく、パンチ、ダイ、精密プレス金型などにも使用される代表的な高速度工具鋼です。

また、ハイスは切削工具だけの材料ではありません。

  • プレス金型
  • ファインブランキング金型
  • パンチ・ダイ
  • 冷間加工用金型
  • せん断工具
  • 精密部品
  • 各種切削工具

など、高い耐摩耗性と硬度が必要となる部品に使用されています。

SKH51などのハイスは「硬くするだけ」ではない

ハイスの熱処理で重要なのは、単純に高い硬度を出すことではありません。

高速度工具鋼では、焼入れによって高硬度化すると同時に、残留オーステナイトや内部応力なども発生します。

そのため、適切な焼戻しを行いながら、

硬度・耐摩耗性・靭性・寸法安定性

のバランスを取ることが重要です。

例えばSKH51では、焼入れ後に高温焼戻しを行うことで二次硬化が生じ、焼入れ直後とは異なる硬さや組織が得られます。

実際の熱処理条件は、鋼種、製品形状、寸法、使用目的、要求硬度などによって変わるため、単純に「SKH51だからこの温度」という設定では十分とは言えません。

同じSKH51でも、製品の形状やサイズによって熱処理条件を検討する必要があります。

ハイスの熱処理で重要になる「冷却」

ハイスの焼入れでは、加熱温度だけでなく焼入れ時の冷却速度も重要なポイントになります。

特に大型部品や断面変化の大きな金型では、製品内部まで十分な冷却を行いながら、同時に熱処理変形や割れのリスクを抑える必要があります。

そのため、ハイスの真空熱処理では、

  • 焼入れ温度
  • 加熱方法
  • 保持条件
  • 冷却速度
  • 冷却ガスの圧力
  • 製品の配置
  • 焼戻し条件
  • 焼戻し回数

などを総合的に検討します。

ハイスの熱処理は「何℃で焼入れするか」だけではなく、「どのように冷却するか」まで含めて考えることが重要です。

真空熱処理によるハイスの焼入れ

ハイスの熱処理方法として広く利用されているのが真空熱処理です。

真空中で加熱することで、通常の大気中加熱と比較して酸化や脱炭を抑えやすく、処理後の表面状態を良好に保ちやすいというメリットがあります。

特に精密金型やパンチなどでは、熱処理後の研削・研磨工程も考慮する必要があります。

表面状態が悪化すると後工程での加工負担が増えるため、熱処理後の仕上げまで考えた熱処理が重要になります。

さらに、ハイスでは焼入れ時に十分な冷却能力を確保することも重要です。

山崎化学エイチ・テイでは、リヒト精光グループの技術を活用し、高速度工具鋼などの焼入れに対応した高速冷却式真空熱処理を行っています。

SKH51の真空焼入れとソルト焼入れを比較

当社では、高速度工具鋼SKH51について、真空焼入れとソルト焼入れの比較試験を実施しています。

試験材はSKH51、φ68×420mm。

硬さ、組織、歪み、耐摩耗性、靭性について比較を行いました。

試験では、焼入れ・焼戻し後の硬さは、

真空焼入れ:63.5HRC
ソルト焼入れ:63.5HRC

となり、硬さを揃えた状態で比較しています。

また、歪みについては、

真空焼入れ:振れ0.25mm
ソルト焼入れ:振れ0.35mm

という結果となりました。

さらに、大越式迅速摩耗試験では中心部・表層部ともに真空焼入れ品が比較試験上優位という結果が得られています。

これらは特定の試験条件・試験材による比較結果であり、すべてのハイス製品に同じ結果を保証するものではありません。

しかし、ハイスの熱処理では硬度だけでなく、歪み・耐摩耗性・靭性まで含めて評価することが重要であることを示す一例です。

SKH51の真空焼入れ・ソルト焼入れ品質比較試験はこちら

粉末ハイスとは?SKH51との違い

ハイスを調べていると、「粉末ハイス」「粉末高速度工具鋼」という言葉も多く出てきます。

粉末ハイスは、粉末冶金法によって製造される高速度工具鋼です。

一般的な溶製ハイスとは製造方法が異なり、微細で均一な組織を得やすいことから、耐摩耗性、靭性、耐疲労性などを重視する用途で使用されています。

代表的な粉末ハイスとしては、HAP40、ASP23、ASP30、DEX系など、各メーカーからさまざまな鋼種が販売されています。

粉末ハイスは、従来のハイスでは耐摩耗性や寿命が不足する場合などに選択肢となります。

一方で、粉末ハイスだから熱処理が簡単になるわけではありません。

むしろ、材料ごとの成分や特性を理解し、メーカー推奨条件を基本としながら、製品形状や要求性能に合わせた熱処理を行う必要があります。

粉末ハイスの性能を引き出すうえでも、焼入れ・冷却・焼戻しの管理は重要です。

「ハイスの寿命が短い」は材料だけが原因とは限りません

「ハイスなのにすぐ摩耗する」

「SKH51なのに欠ける」

「熱処理後の寸法が安定しない」

このような問題が発生した場合、材料変更を検討する前に、熱処理条件を見直すことも重要です。

例えば、

  • 焼入れ温度が適切か
  • 加熱が均一に行われているか
  • 冷却能力は十分か
  • 焼戻し条件は適切か
  • 残留オーステナイトの制御はできているか
  • 製品形状に対して無理のない冷却になっているか
  • 熱処理後の硬度が狙い通りになっているか
  • 必要に応じてサブゼロ処理などを検討すべきか

といった点を確認する必要があります。

特に精密金型では、硬度だけを見て熱処理の良し悪しを判断することはできません。

寸法変化や歪み、研削性、耐摩耗性、欠けなど、実際の使用条件まで考慮して熱処理を設計することが重要です。

ハイス・粉末ハイスの熱処理は山崎化学エイチ・テイへ

山崎化学エイチ・テイ株式会社では、ハイス(高速度工具鋼)、SKH51などのハイス鋼、粉末ハイス、各種金型用鋼材の真空熱処理に対応しています。

単純に「HRC○○まで硬くする」という熱処理ではなく、製品の用途や形状、要求硬度、変形リスクなどを確認したうえで、適切な熱処理条件を検討します。

また、リヒト精光グループとの連携により、真空熱処理だけでなく、サブゼロ処理や各種熱処理技術を含め、金型・工具の使用環境に合わせたご提案が可能です。

「SKH51の熱処理を依頼したい」
「ハイス鋼を真空焼入れしたい」
「粉末ハイスの熱処理について相談したい」
「熱処理後の変形や硬度に問題がある」
「ハイスの寿命を改善したい」

このような場合は、ぜひ山崎化学エイチ・テイ株式会社へご相談ください。

ハイスは、優れた材料を選ぶだけで性能が決まる鋼材ではありません。

材料特性を理解し、焼入れ・冷却・焼戻しを適切に行うことで、その性能を引き出すことができます。

SKH51をはじめとする高速度工具鋼、そして粉末ハイスの熱処理でお困りの際は、熱処理条件の検討からお気軽にお問い合わせください。

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