【無電解ニッケルめっき後の熱処理でここまで変わる ― クロムめっきに迫る硬度を引き出す】
表面処理の世界で「硬いめっき」と聞いて、まず思い浮かぶのは硬質クロムめっきではないでしょうか。一般的に硬質クロムめっきの皮膜硬度はおよそHv700~1000程度とされ、耐摩耗用途の代表格として広く知られています。
しかし実は、無電解ニッケルめっきも条件次第で、それに匹敵する硬度を得ることが可能です。とくに熱処理を適切に行った場合、その性能は大きく向上します。
■ リン含有量と熱処理で変わる硬度
無電解ニッケルめっき(Ni-Pめっき)は、リン含有量によって特性が異なります。まずは硬度の違いを整理してみましょう。
| 項目 | 低リン | 中リン | 高リン |
|---|---|---|---|
| 硬度(Hv)熱処理なし | 700 | 550 | 500 |
| 熱処理条件 | 300℃ × 2時間 | 400℃ × 2時間 | 400℃ × 2時間 |
| 熱処理後 最大硬度(Hv) | 950 | 950 | 950 |
熱処理を行わない状態では、低リンタイプがHv700前後、中リンでHv550、高リンでHv500程度です。この段階では、硬度面で見るとクロムめっきの下限付近、あるいはそれ以下という印象を持たれるかもしれません。
ところが、適切な温度で2時間保持することで、いずれのタイプも最大Hv950程度まで上昇します。これは析出硬化によるもので、加熱によりNi₃Pなどの化合物が微細に析出し、皮膜が著しく硬化します。
数値だけを比較すれば、熱処理後の無電解ニッケルめっきは、一般的な硬質クロムめっきの硬度レンジとほぼ同等の水準に達することになります。
■ 硬さだけではない無電解ニッケルの特長
もちろん、クロムめっきと無電解ニッケルめっきは性質が異なります。クロムめっきは高硬度で摩耗に強い一方、膜厚分布や形状追従性には制約があります。
無電解ニッケルめっきは電流を用いない化学還元反応によって析出するため、複雑形状や内径部にも均一な膜厚が得られます。そのうえで、熱処理によってHv900以上の硬度を実現できる点は、大きなメリットです。
特に以下のような用途では有効です。
・シャフトやピンなどの摺動部品
・金型の部分補修や耐摩耗対策
・寸法精度を重視する精密部品
・複雑形状でクロムめっきが難しい部品
耐食性を重視する高リンタイプであっても、熱処理を行えば高硬度化が可能であるため、用途設計の幅が広がります。
■ “めっき後の熱処理”が性能を決める
重要なのは、無電解ニッケルめっきは「めっきしただけでは完成ではない」という点です。
低リンは300℃×2時間
中リン・高リンは400℃×2時間
このように、リン含有量ごとに最適な熱処理温度があります。温度が不足すれば析出が進まず、硬度は上がりません。逆に過度な温度や時間は、皮膜の性質や母材に影響を及ぼす可能性があります。
また、母材が焼入れ鋼や調質材の場合、既存の熱処理履歴との関係も無視できません。単純な加熱ではなく、材料特性を踏まえた条件設定が求められます。
■ 無電解ニッケルめっき後の熱処理、当社で対応します
当社では、無電解ニッケルめっき後の熱処理のみの受託にも対応しております。
・リン含有量に合わせた最適温度設定
・炉内温度分布の均一管理
・精密部品に配慮した昇温・冷却管理
・母材への影響を考慮した条件提案
「クロムめっき並みの硬度を出したい」
「耐摩耗性をさらに高めたい」
「めっき後の熱処理だけを依頼したい」
そのようなご相談にも、熱処理専門業者としてお応えいたします。
硬質クロムめっきが“硬いめっき”の代表格であることは間違いありません。しかし、無電解ニッケルめっきも、タイプ選定と適切な熱処理を組み合わせれば、同等水準の硬度を実現できます。
無電解ニッケルめっき後の熱処理は、性能を一段引き上げるための重要な工程です。皮膜の可能性を最大限に引き出すために、ぜひ一度ご相談ください。
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