「ハステロイの熱処理はできますか?」
展示会やお客様訪問の際によくいただくご質問の一つです。
ハステロイにも種類がありまして、ハステロイC-22、ハステロイC-276、ハステロイB-282などが流通しており、耐食性や耐熱性に優れたニッケル基合金として知られており、化学プラントや半導体製造装置、排ガス処理設備などで使用されています。
一方で、一般的な鉄鋼材料と比較すると流通量が少なく、加工や熱処理の情報も限られているため、
- 熱処理をすると硬くなるのか
- 溶接後に熱処理は必要なのか
- 熱処理によって耐食性は変化しないのか
といったお問い合わせをいただくことがあります。
今回はハステロイの熱処理について、現場目線でご紹介します。

ハステロイは焼入れして硬くなる材料ではないのですが・・・
まず最初に知っていただきたいのは、ハステロイは一般的な機械構造用鋼のように「焼入れ・焼戻しによって硬さを上げる材料」ではないということです。
例えばSCM材やSKD材であれば、焼入れによって組織を変化させ、高硬度化させることができます。
しかしハステロイの場合、熱処理の主な目的は硬度向上ではなく、「耐食性能を維持すること」にあります。
そのためハステロイで行われる熱処理の多くは1100℃以上からの急冷による固溶化熱処理となります。
ハステロイの種類により固溶化処理温度は異なるのも特徴の一つです。
しかし、特殊な例としては593℃~982℃で長時間加熱すると金属間化合物の析出で時効硬化するのですが、加熱時間が長いほど硬化が大きいとされており、ハステロイCで800×50hの時効加熱で380HBくらいになることが知られています。但し時効硬化することで耐食性は低下します。
実は加工後のトラブル相談も少なくありません
ハステロイは粘りが強く、加工時に大きな応力が残る場合があります。
そのため、「加工後は問題なかったが、長期間保管していたら反りが発生した」
「溶接後に寸法が安定しない」といったご相談をいただくことがあります。
もちろん製品形状や加工条件によって状況は異なりますが、こうした場合には熱処理による応力除去や固溶化熱処理が有効となるケースがあります。
しかし、安易に加熱をして応力除去焼鈍をすることで鋭敏化という現象により脆く耐食性落ちることがあるので注意が必要となります。
ハステロイCは927℃~982℃の過熱により10秒で鋭敏化するが、ハステロイC-276鋭敏化までに15倍の時間がかかるとされています。
ハステロイの熱処理で重要なのは温度と冷却
ハステロイの熱処理では加熱温度に注目されがちですが、実は冷却条件も非常に重要です。
せっかく適切な温度で熱処理を行っても、冷却が不十分な場合には耐食性に悪影響を与える析出物が発生する可能性があります。
そのため、熱処理設備だけでなく、
- 製品サイズ
- 製品形状
- 装入量
- 冷却方法
まで考慮した管理が必要になります。
ハステロイの熱処理は経験も重要です
ハステロイは比較的高価な材料であり、使用される製品も重要部品であることが少なくありません。
固溶化処理温度が1100℃以上なのに対して、1270℃で溶け始めるという性質がありますので加熱方法、温度保持、冷却のタイミングなどが重要となります。
そのため熱処理では単純に温度を上げればよいというものではなく、「どのような目的で熱処理を行うのか」を事前に明確にすることが重要です。
当社でも、「溶接後の組織改善をしたい」「加工応力を除去したい」「熱処理後の変形を抑えたい」など、お客様ごとに異なる課題についてご相談をいただいております。
材質や形状、使用環境によって最適な条件は変わりますので、ハステロイ材の熱処理をご検討の際はお気軽にご相談ください。
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