大型ダイカストのSKD61種のポテンシャルを最大限に引き出す熱処理
自動車業界をはじめとする製造分野では、軽量化・高精度化・コスト低減の要求が年々高まっています。それに伴い、アルミダイカスト製品の需要は増加し、使用される金型にもこれまで以上の耐久性と安定性が求められています。
しかし現場では、ヒートクラック(熱疲労割れ)や溶損、焼付きといったトラブルに悩まされるケースが少なくありません。これらの多くは、材料そのものよりも「熱処理の仕上がり」に起因していることが多いのが実情です。

金型寿命の鍵を握る「焼入れ時の冷却速度」
ダイカスト金型に多く使用されるSKD61系材料は、高温環境下での強度や靭性が重要視される鋼種です。これらの性能を最大限に引き出すためには、焼入れ時の冷却速度のコントロールが極めて重要になります。
冷却が遅すぎれば硬さが不足し、摩耗や焼付きが発生しやすくなります。一方で、過度な急冷は内部応力を増大させ、割れや歪みの原因となります。特に大型金型では、表面と中心部で冷却速度に差が生じやすく、組織のばらつきが性能不安定の要因となります。
つまり、「速ければ良い」「遅ければ安全」という単純な話ではなく、均一かつ制御された冷却が求められます。
大型・複雑形状に対応するGO処理
当社では、この課題に対してGO処理(加圧ガス+油冷却の複合冷却)を採用しています。
GO処理の特徴は、冷却プロセスを段階的に制御できる点にあります。油冷却のみの場合に発生しやすい過冷却や温度ムラを抑えつつ、ガスの流動を組み合わせることで、金型全体を均一に冷却します。
具体的には、以下のような冷却段階を適切に制御します。
- 蒸気膜段階
- 沸騰段階
- 対流段階
これにより、急冷による割れリスクを抑えながら、高い硬度と靭性を両立させることが可能になります。
実機検証で確認されたヒートクラック抑制効果
実際のアルミダイカスト金型において、従来処理とGO処理を比較した結果、約17,000ショット後の浸透探傷試験において、ヒートクラックの発生量および長さに明確な差が確認されています。
この結果は、単なる理論ではなく、実際の生産現場において
- 初期補修のタイミングを遅らせる
- 金型メンテナンスコストを低減する
- 安定したショット数を確保する
といった具体的なメリットとして現れています。
大型金型にも対応可能な処理体制
近年のダイカスト金型は大型化・複雑化が進んでおり、熱処理設備にもそれに対応した能力が求められます。
当社では
- 最大サイズ:1000mm(高さ)×1000mm(幅)×1200mm(長さ)
- 最大重量:約1300kg
まで対応可能な設備を保有しており、中~大型金型の処理にも安定して対応できます。
大型品において特に重要となる「中心部まで均一な性能を確保する処理」においても、設備とノウハウの両面から最適な条件設定を行います。
表面処理との組み合わせによるさらなる寿命向上
熱処理単体だけでなく、その後の表面処理との組み合わせも金型寿命に大きく影響します。
特に、母材の性能を最大限に引き出したうえでの窒化処理や表面改質を行うことで、
- 耐摩耗性の向上
- 耐ヒートチェック性の向上
- 耐疲労強度の向上
といった相乗効果が期待できます。
金型寿命を延ばすために必要な視点
ダイカスト金型の寿命向上は、単に高価な材料を選定するだけでは実現できません。
重要なのは、
- 材料特性を理解した熱処理条件の設定
- 冷却速度の最適制御
- 大型品でも均一性を確保できる設備
- 表面処理とのトータル設計
といった総合的なアプローチです。
GO処理はその中核となる技術の一つであり、特に中・大型金型においてその効果を発揮します。
金型の寿命やトラブルでお悩みの際は、図面段階からでも構いません。用途・材質・形状に応じた最適な熱処理をご提案いたします。
ダイカスト金型の大型化・高機能化が進む中で、熱処理に求められる役割はますます重要になっています。適切な冷却制御による組織の均一化と、ヒートクラック対策を両立させることが、金型寿命の安定化に直結します。
こうした背景のもと、山崎化学エイチ・テイ株式会社はリヒト精光グループに加わり、大型アルミダイカスト金型の熱処理分野において、GO処理の受託を開始いたしました。これまで培ってきた熱処理技術とグループの設備・ノウハウを融合させることで、中・大型金型に対しても安定した品質での対応が可能となっています。
ダイカスト金型の寿命向上やヒートクラック対策でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。用途や条件に応じた最適な熱処理をご提案いたします。
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