― 熱処理によって引き出される高速度工具鋼の本来の性能 ―

高速度工具鋼は、耐摩耗性・耐熱性・靭性を兼ね備えた工具鋼として、長年にわたり金型や工具分野で使用されてきました。近年では粉末ハイスなど高機能材も増えていますが、現在でも高速度工具鋼は適切な熱処理を施すことで十分な性能を発揮できる鋼材です。


高速度工具鋼の主な用途

高速度工具鋼は、以下のような分野で広く使用されています。

  • ファインブランキング金型
  • 精密プレス金型(パンチ・ダイ)
  • 冷間加工用金型
  • 切削工具、せん断工具
  • 高い耐摩耗性が求められる機械部品

特に、安定した品質とコストパフォーマンスが求められる用途では、高速度工具鋼は今なお重要な材料として位置づけられています。


高速度工具鋼は「熱処理で決まる」鋼材

高速度工具鋼の性能は、材料そのものよりも熱処理条件によって大きく左右されるという特長があります。
適切な焼入・焼戻しを行うことで、

  • 高い硬度(一般的に60~63HRC程度)
  • 優れた耐摩耗性
  • 使用中の寸法安定性
  • 実用上十分な靭性

といった特性がバランスよく引き出されます。

一方で、熱処理条件が不適切な場合には、

  • 硬度不足
  • 焼戻し不足による脆化
  • 残留オーステナイト過多による寸法変化

などの問題が生じ、「高速度工具鋼は寿命が短い」「欠けやすい」といった評価につながることもあります。
つまり、高速度工具鋼は熱処理技術の良し悪しがそのまま製品寿命に直結する鋼材と言えます。


真空熱処理による高速度工具鋼の優位性

現在、高速度工具鋼の熱処理方法として主流となっているのが真空熱処理です。
真空熱処理には、以下のような明確なメリットがあります。

  • 酸化・脱炭が起こりにくい
  • 表面品質が安定する
  • 均一加熱による硬度ムラの低減
  • 後工程(研磨・ラップ加工)の負荷軽減

高速度工具鋼は合金元素量が多く、表面状態の影響を受けやすい鋼材です。
真空熱処理は、高速度工具鋼が本来持つ耐摩耗性や靭性を損なうことなく引き出すために、非常に有効な手法です。


高速度工具鋼の熱処理で重要なポイント

高速度工具鋼の真空熱処理では、

  • 焼入温度の精密な管理
  • 焼戻し回数・温度設定
  • 残留オーステナイトの適切な制御

といった工程設計のノウハウが重要になります。
同じ高速度工具鋼であっても、熱処理条件の違いによって、金型寿命や安定性には明確な差が生じます。


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高速度工具鋼をはじめとする金型用鋼材に対し、真空熱処理を中心とした受託熱処理を行っています。

単に高硬度を出すだけでなく、

  • 使用用途を意識した硬度設定
  • 欠け・割れを抑えた靭性バランス
  • 安定した再現性

を重視した熱処理を行っている点が特長です。

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まとめ ― JIS高速度工具鋼(SKH鋼種)と熱処理の重要性

JIS規格における高速度工具鋼には、
SKH2、SKH3、SKH4、SKH9、SKH10、SKH51、SKH52、SKH55、SKH57、SKH59
といった鋼種が定められており、それぞれ成分や特性が異なります。

これらの高速度工具鋼は、どの鋼種であっても熱処理によって初めて性能が完成する材料です。
高速度工具鋼の寿命や安定性に課題を感じている場合、その原因は鋼材ではなく熱処理条件にある可能性があります。

高速度工具鋼の熱処理をご検討の際は、真空熱処理の実績を持つ当社にぜひご相談ください。

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